ルイ・ドゥ・ブロイの1939年の著作です。なかなかに面白かった。
物理学の知識があると非常に分かりやすいのでしょうが、なにせドゥ・ブロイってド・ブロイ波の人でしょ、っていう程度の知識しかないので(しかもド・ブロイ波がなんであるかを全く覚えていない)、前半は読み飛ばし気味になりましたが、難しいことは書いていなかったです。
ニュートン、ラプラス、デカルト、、、アインシュタイン、プランク、ボーア、コンプトン、、、物理学者の成果を連ね、1930年代時点での量子物理学の概説を記述しています。
論旨は終始一貫しています。ニュートン力学(=粒子による解釈)は巨視的には間違っていないが微視的には説明がつかないことが出てきた、それを説明するのが量子力学です、っていうところを繰り返し説明されていました。光は粒子なのか波なのか、物質はどうなのか、といった具合。20世紀初頭の物理学は転換点だったらしく、そのあたりの戸惑い感があったのかと。
プランク定数の意義を繰り返し説明しています。そんなに意義がある定数とは知らなかった。入試物理で覚えてそれっきりでした。
後半は哲学という副題をつけています。確かに、存在は不確定で確率に支配されるとか言われると俄然哲学っぽくなってきます。
印象に残ったのは、P.312 1932年のパストゥール高等中学校の卒業式での講演。高等中学校というのは日本でいう高等学校なのでしょうか。
若いジェネレーションは、今までに行われた実験や積み上げられた知識を利用し得るように多く学ばなければならないけれども、ただ学ぶだけに甘んぜず、自ら試みる努力の好み*1あらゆる形の美に対する愛、正しく考える術、かつその考えを正しく表す術を持たなければならない。
特に太字のところ、若手に対するドゥ・ブロイの想いが伝わってきます。実学だけではなくて、倫理的なところにも注意を払いなさい、っていうメッセージかと。
※P.313からの「岩波新書版 仁科芳雄先生の序文」を最初に読むと本文に入っていきやすい。序文だから当然なのですが。
*1:自ら試みる努力を好み、の誤記ではないかと