Kawataka’s diary

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『生命とは何か(シュレーディンガー)』 『生物と無生物のあいだに(福岡伸一)』

シュレーディンガー方程式でおなじみのシュレーディンガーが物理学者の立場で生命を論じた本です。1944年の出版。

ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を論文発表したのが1953年、したがってシュレーディンガーがこの本を書いたときには遺伝のメカニズムはまだ明確には分かっていなかった。染色体の存在は知られていたようですが、文中で遺伝をつかさどるのはタンパク質と言っています。※正しくは核酸のはず。
なので、論理展開にぎこちなさはあります。

抜粋すると以下の通り。生物と物理はあんまり関連がないように思われるのですが、こういう思い切った考え方は面白いと思いました。

・生物が多くの原子からなるのは、偶発的な一原子による出来事が過大な役割を演じないようにしているから。
・突然変異はエネルギー準位の不連続性で説明できる。
・物理学的には、秩序を乱す方向へ。エントロピーは増加する方向に動くのに、生物はその傾向を示さない。秩序をかき乱されることなく持続する。
 →生物は、物理学の「確率による仕掛け」とは全く異なった「ある仕掛け」に導かれている。

 

 

訳者が、解説で『生物と無生物のあいだに 福岡伸一 (講談社現代新書)』を批判しています。”まともに読んでいない”、と全否定していました。
ただ、この機会に改めて『生物と無生物のあいだに』を読みなおしましたが、全否定することもないように思いまして、どうなんだろう。

シュレーディンガー
「生物は負のエントロピーを取り込んでエントロピー増加を抑え、秩序だった構造を維持している。複雑な有機化合物の形をしているきわめて秩序の整った状態の物質が高等動物の食料として役立っている」
と論じています。ですから、そのまま読むと、福岡氏の通り「シュレディンガーは、タンパク質などのような有機高分子の秩序を負のエントロピーの源と解説した」でも間違っていないように思ったのですが。

負のエントロピーという概念が独特です。一般大衆向けの講演なのでわかりやすさを優先したんだと思います。

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生物と無生物のあいだに』、数年前に処分してしまったので古本屋さんで買いなおしました。100円。2015年の第43刷。77万部とのこと。相当数が売れたので古本価格も抑えられているのでしょう。

動的平衡:秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない P.166