Kawataka’s diary

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僕は明日、昨日の君とデートする

2016年公開の映画です。オンデマンド配信でお勧めにあったのでふらっと見てみたら結構面白くて二回見ました。二回見ると良くわかる。

宝ヶ池、叡山電鉄、鴨川デルタ、三条大橋伏見稲荷といったリアルな京都が舞台ですが、内容はファンタジーです。そしてハッピーエンドではない。せつない話です。

 


主人公の男女は20歳、京都市内の美大と専門学校に通っています。
しかし住む世界が違う。文字通り違う。毎日の進み方が逆行する世界に住んでいる。
二つの世界は普段は重ならないが5年に一度の周期で重なる。重なり期間は30日間。その30日の間に二人がデートするという物語です。

逆行は一日単位です。したがって自分の明日は相手の昨日です。タイトルの通りです。もう少し突っ込んで言うと、自分がこれから経験することは相手はすでに経験済みです。自分の立場からは相手が未来を知っているように見えるが、未来予知とは違う。相手にとっては過去のことだから知っていて当然ということになる。

さらに言うと、相手にとっての“最初の一日”は、自分にとっての“最後の一日”です。彼の初めての会話は、彼女の最後の会話です。

こういったことが映画の中で説明されます。それを頭に入れて二回目を観て、内容が理解できました。

 

この映画はSFではないです。
SFタイムトラベルでおなじみのパラドックスや、二つの世界の行き来の方法、一日の起点と終点、、、などを考えながら観る映画ではないです。「自分の明日は相手の昨日。自分の最初は相手の最後」という世界でデートするということは、、、と考えながら観て楽しむ映画です。

 

5年に一度重なりますから、両世界は二人が20歳のとき以外にも重なっています。

  彼                   彼女 
  5歳               ―     35歳      彼が落水事故
  10歳          ―   30歳   彼に箱を渡す
  15歳          ?   25歳  
  20歳          ―   20歳   デート
  25歳          ―   15歳   彼女に過去を話す
  30歳          ?   10歳  
  35歳          ―     5歳     彼女が縁日で事故

 

20歳の15日目がちょうど中間点で、その日を境に立場が入れ替わる。自分が20歳の16日目を迎えると、それ以降は相手をリードする立場になる。

彼は25歳の時に彼女(15歳)に会って20歳のデートの経験を伝えました。彼にとっては過去の経験ですが、彼女にとっては未来です。それをメモした彼女は20歳のデートの初日からメモ通りに行動します。

一方で、彼女は彼に何も告げませんでした。会ってはいます。30歳の彼女は彼(10歳)に会って鍵付きの箱を渡します。(その箱は20歳の16日目のデートで開けることになります。逆行世界の存在を彼に信じさせるためのツールです。)
ただし、未来のことは何も言わなかった。だから彼の20歳のデートはゼロからのスタートです。本当に一目惚れして恥ずかしそうに声をかけるところから30日間が始まる。

 

一回目を見た後で、なぜ彼女は彼に未来を教えなかったのかを考えていました。この世界なら、互いに未来を教えても矛盾は生じないはずなので。

この世界で二人とも平等にハッピーになれるのは、互いに未来を教えあった場合と思います。未来を教えあっていたら、30日間のデートを前半後半の15日間ずつ双方がリードしあって、二人とも楽しい思い出を平等に積み上げることができたはずです。

 

でも彼女はそうしなかった。彼女にはそれが分かっていたはずなのに。

 

恐らく、彼に対する思いやり・優しさ、です。
彼女は彼に幸せな思い出を30日間ずっと積み上げてほしかったんでしょう。ゼロスタートのデートで彼に本当にワクワクしてほしかった。だから告げなかったのだと。

結果的に、彼女は、彼女の後半15日分のデートで積み上げられたはずの幸せを彼にすべて譲ったことになります。彼女の「教えない」という判断がせつない。

そして、彼がこの事実に気づいたのが20日目の夜というのが悲しい。彼が過去に戻ってデート初日からやり直すことはできません。これはすなわち、彼女の未来は変えられない、彼女のデートの残り20日間は変えられない、ということです。

だから、彼は残りの10日間、メモ通りのことをとにかく精一杯全力でやったんです。彼女のために。

 

といったようなことを、二回目を観ながら考えていました。

 

映画の主題歌はback numberの名曲「ハッピーエンド」です。この曲、歌詞は全くハッピーではなくて意味もよくわからなかったのですが、この映画を見ると分かります。染み入ります。

 

 

原作小説は2014年の出版ですでに160万部を超えているそうです。原作も読んだことが無かったです。どこかで入手して読む予定。