十年近く前に出版された単行本です。出版されたときに本を買ったのですが、読む機会を逸して本棚にしまい込んでいました。
昨年アニメ映画にもなったので、気になって引っ張り出してきて読み始めました。
森見小説にしては珍しくヘッポコ大学生は出てきません。小学生の「少年」と歯科医院のお姉さんの話です。
お姉さんはコーラの缶からペンギンを作り出すことができる(!)、どうして作れるのか、その謎をひと夏かけて少年が研究するというあらすじです。爽快感と切なさが残る小説です。
この本の興味深い点は「少年」がちゃんと研究しているところです。研究の基本は仮説と検証と考察にあるのですが、少年はちゃんと仮説と考察をしています。そして実験ノートをちゃんと書く習慣をつけていることもGoodです。
お姉さんの元気さについての記録をもとにグラフを書き、<海>の半径のグラフと比べて相関関係を見出すくだり、ほんとに”研究”しています。素晴らしい。
「大変複雑なものだから仮説が立たない」
「大きな紙に関係のあることをぜんぶメモしなさい。ふしぎに思うことや、発見した小さなことをね。大事なことは、紙は一枚にすること。できるだけ小さな字で書く。 ~何度も何度も眺める。いろいろな組み合わせを頭の中で考える。ずっと考える。そしてよく眠る」(P.279)お父さんとの会話より
「問題を分けて小さくする」(P.71) デカルトの方法序説から引用?
お父さん、かなり本気です。