Kawataka’s diary

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コレラの感染様式について(ジョン・スノウ)

イギリスの医師がコレラ流行の原因を探った報告書です。
19世紀半ばのロンドンの悲惨な衛生状況が書かれています。せっかく上水道が整備されているのに、取水地が汚染されていたり、上下水道が分離されていなくて下水が上水に混ざったり。あるいは公共井戸の近くに下水配管があったり、、、。蛇口をひねったら水は出るものの、その水が全く信用ならない。あるいは上水がない世帯は、テムズ川から水を汲んで飲んでいた、とか。今の知識ではコレラが流行するのはしごく当然と思いますが、コレラの原因が全くわかっていない時代の話です。

ロンドンのあちこちで、ある日突然コレラが流行する。そしてしばらくしたら終息する。いったいなぜ?
スノウ医師は水が怪しい、と睨み、井戸ポンプと感染者の関係を地図にマッピングしたり、コレラ患者が契約している水道会社をリスト化して統計を取ったり、地道にデータを集めて、仮説を立証していきます。

途中で、ロンドン市民30万人を水道会社で二つのグループに分ける(P.121)とかいう壮大な計画が出てきます。コンピューターもない時代に。
感染者が出たら水道会社を聴取するんですが、当然ながら、皆さんはどの会社と契約しているかなんてまず覚えていない(P.124)。だから、領収書を見せてもらう、とかするのですが、大家さんが遠方に住んでいたらもうお手上げ。
そこでスノウ氏は水の中の塩化ナトリウム量を比べて、会社を識別する方法を編み出します。さすがです。(当時の水道会社は採水して沈殿処理くらいしかせずに供給していたから、採水地によっては海水由来の塩化ナトリウムが入っていたらしい。)
巻末の付録にはコレラ患者が「どの水を飲んでいたか」のリストが載っています。スノウの苦労の結果です。これだけは報告書に残したかったんでしょうね。

最終的に、スノウはコレラと上水の関係を確度高く怪しいと疑って、清潔な水が得られない場合は沸騰させてから使用するように、と書いています。(P.202  12の対策から)

 

コッホがコレラ菌を発見したのが1882年、スノウが亡くなってから25年ほど後のことでした。