Kawataka’s diary

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ファイとパイ

図面に書かれている「」、ファイと読みます。直径のことです。
⌀10なら直径10mmのことです。(場合によっては10cmかも。)

ただ、直径のことをパイと呼ぶ人が多い。特に年配の方で。
恐らく、円周率「π パイ」と混同していると思われます。あとファイが発音し難いのも理由かもしれません。
ギリシア文字のファイΦに直径と言う意味は無い。いわば当て字。もともとは直径をファイと呼ぶのも間違いだったが、あまりにも汎用化したからJISの定義に追加された、という経緯があるらしい。)

 

朝ドラ「舞いあがれ!」で、コンサル会社を立ち上げたヒロインが、パンチングメタルの精巧さを町工場の社長に説明する際に、「1mmの板厚に0.5パイの小さな孔をあけて~」 って言ってましたが、ここは正しくは「0.5ファイ」、もしくは「直径0.5mm」です。

町工場ではパイと呼ぶのが一般的なのでしょう。だから、このドラマでもパイと言ったのでしょう。
言葉はコミュニケーションの道具だから意味が伝わればOK。ただし、初対面の技術者に対して使うのは不用意だったかもしれません。

このシーン、若手の営業部員が覚えたての技術用語で”わかってます感”を押し出して商談をしているようで、見ていて痛々しかった。素直に「1mmの板厚に直径0.5mmの孔を開けて」、と言っても良かったと思います。

 

大昔、パンチングメタルの導入検討をしたときに、板厚よりも小さい直径のパンチングメタルを作るのは難しい、と聞いた記憶がうっすらとあります。理由は忘れてしまいましたが。だからなにか工夫があるはず。パンチングメタルの苦労話がドラマの中で出てこないかな、と期待したのですが、そんな話は全く出てこなかった。

コンサル会社ではパンチングメタルをふわっと商品化して、ふわっと売り先が決まっていました。そのあとに開発したチタンの指輪もふわっと売れていきました。
ふわふわでリアリティがまるでなかった。

 

このドラマは、コンサル会社を設立してから急に雑な作りになったと思います。人力飛行機航空大学校、螺子の製造、いずれも精密なドラマだったのに。
飛行機や螺子は、監修考証をする人がいたから精密に描けたのでしょう。一方でコンサル会社は考証する人がいなくて作家が想像だけで脚本を書いているように思えます。
「町工場の技術を連結して素晴らしい新商品を開発し、世に送り出したい。」、皆が一度は思うことです。でも実際には非常に難しい。

朝ドラはあと3週間くらいで終わります。最後に厄介なテーマに手を出したものです。

 

リアリティがないとは言え、前作「ちむどんどん」ほどは酷くないと思っています。
ちむどんどんは矛盾してストーリーが破綻していました。ドラマとして成り立っていませんでした。

酷さ加減で今でも覚えているのは沖縄そばの改善のところ。客足が伸びない原因は沖縄そばの味付けにあるとか突然言い出し、沖縄から取り寄せたこだわりの豚肉で作っているのに「味の問題は豚肉だ!」とか言い出して、近所の商店街でたまたま入手できた皮付き豚肉を使ったら劇的に良くなった♪、商売大繁盛♪、というストーリーでした。
沖縄からわざわざ豚肉を取り寄せてたんじゃないんかい、メニュー決めるときにいろいろと試作してたんじゃないんかい、と突っ込みどころが満載でした。
ご都合主義にもなっていなかった。無茶苦茶でした。破綻していました。
ちむどんどんは朝ドラの歴史に残る迷作と思います。