Kawataka’s diary

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気球 2

アメリカ、カナダで所属不明の気球があいついで発見され、空対空ミサイルで撃破されています。
各国とも相当にナーバスになっているようです。日本でも気球に対する武器使用緩和の検討が始まりました。気球が偵察だけならまだしも、生物兵器核兵器が積載されていたらと考えると、ピリピリするのもわかります。

80年前、日本陸軍は爆弾を吊るした水素気球を太平洋沿岸から飛ばして偏西風に乗せ、アメリカ本土を攻撃する作戦に着手しました。風船爆弾と呼ばれる兵器です。
風船爆弾を取り上げた記事を見ると、「女学生が和紙をこんにゃく糊で張り合わせて気球を作った。」と書かれることが多く、竹やりでB29みたいな印象を受けることが多いかもしれませんが、当時のアメリカ軍は軽んじず、今と同様に西海岸全体に厳戒態勢を敷きました。戦闘機、レーダー、哨戒艇陸上部隊を配備して迎撃態勢を敷いた、と。
細菌兵器を懸念した、とされています。
和紙で作られた気球はレーダーに映らないから発見が困難で、空中で撃破できたのは数個にとどまったとされています。今も昔も浮遊気球を破壊するのは難しいようです。

 

日本陸軍風船爆弾は、「こんにゃく糊で和紙を何枚も張り合わせた」と書かれるからおもちゃか民芸品みたいに思えてしまうのですが、これを別の表現にすると「セルロースグルコマンナンの積層シート」です。こう書くと途端に化学っぽくなります。
水素ガスバリア性を有し、夜間の零下数10℃から日中の数10℃までの温度変化とそれによるガスの圧力変化に耐えられる柔軟性を持つ材料です。しかも100%植物由来でサステイナブル

当時の日本ではアルミや天然ゴムは貴重品で気球には回してもらえないから、国内で調達できる材料だけで作れ、という制約のなかで材料を調達して完成させたものです。研究者の苦労は相当なものだったはずです。

(おまけにアメリカで地上に落下して焼夷弾が起爆したら風船本体も燃えるから後に何も残らない。秘匿性が高いという付加価値もある。
アメリカ軍は墜落した気球を回収して分析したが、アメリカ大陸にはコンニャク芋が無かったから、最後まで気球被膜の構造が解明できなかった、という伝説もあります。)

 

グルコマンナンセルロースがなぜ水素ガスを効果的にバリア出来るのか、考え出すと止まらないです。