Kawataka’s diary

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情念論 (ルネ・デカルト)

1649年、ルネ・デカルトが死ぬ3か月前に出版された本です。

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情念とは、日本語では感情というような意味合いと思います。P.60には「単純で基本的な情念は、驚き、愛、憎しみ、欲望、喜び、悲しみの六つだけであり、他のすべての情念は、これら六つの情念のいくつかの複合、~」ということなので。

この本でユニークなのは第一部、人体の動作機構を「精気」という物質で説明しようとしたところでしょうか。精気とは「血液が気体化した微細な粒子の蒸気」(訳注)で、精気が神経の管を通って筋肉を動かす、と。当時は流布されていた説だったようです。
もちろん不正確なのですが、神経伝達とか感情の動きとか、当時はまるで仕組みが分からないことを、分からないなりに理屈を考えて説明を試みています。人体をまるで機械であるかのように見なして、インプットとアウトプットで説明をしていきます。
さすが、科学者デカルト

 

第二部の「愛着、友愛、献身の違い」とか「愛と憎しみの違い」とかとか、昔も今も人間が疑問に思うことはそんなに変わらないみたいです。
「子供と老人が泣きやすいのはなぜか」って真面目にこれを論じるのが面白い。

第三部、不決断について。
「現前するすべてのものについて確実で決然たる判断をする習慣をつけ、さらに、最善と判断することを行えば、たとえその判断が大きく間違う可能性があっても、とにかく自分の義務を果たしている、と思う習慣をつける」P.149
優柔不断を戒めています。 

 

第三部の最後から。
「情念はその本性上すべて善い、その悪用法や過剰をさけるだけでよい」 P.178
「偶然的運にも恵まれない場合は、人生においてまた最大の辛さを見いだすかもしれない。けれども、知恵の主要な有用性は、次のことにある。すなわち、みずからを情念の主人となして、情念を巧みに操縦することを教え、かくして、情念の引き起こす悪を十分耐えやすいものにし、さらには、それらすべてから喜びを引き出すようにするのである。」

感情は本来善いものだ。だけど感情に振り回されるな。感情をコントロールできれば安定して暮らすことができる。ということと理解しました。

 

 

デカルト本はひとまずこれで終わり。