Kawataka’s diary

週末と休日メインで更新中

戦争論 下巻

ようやく下巻を読み終えました。

下巻の最初は、中巻に続き防御について。その後で攻撃についても書かれていますが、これは執筆の途中だったようです。

クラウゼヴィッツは、「防御は攻撃よりも有利」と書き、防御の目的は有利な講和を結ぶこと、と説く。そして闘争の究極目的は、自国を保全し敵国を完全に打倒するにある、再び約言すれば、我が方の意図通りに締結された講和に他ならない。P.77とする。

防御を攻撃よりも先に描いている当たり、先ず防御を考える軍人の思考が現れているようで興味深いです。

最後に、上巻同様に、戦争についての概要を記述しています。が、ここも途中だったようです。というか、全部書き終えたら上巻と合わせて整理統合したかったんじゃないかと思いました。
戦争は政治の道具である。戦争は必然的に政治の性格を帯びざるを得ない、戦争は常に政治の尺度をもって測られねばならない。それだから戦争指導は、この大綱においては政治そのものである。政治は戦争において、ペンに代えるに剣をもってするが、しかしそれだからと言って政治自身の法則に従って考えることを廃するものではない、P.328
戦争は政治の道具である、というところ、軍人の考え方として重要と思います。

文民統制」という言葉がある通り、政治家と軍人の関係をきちんと整理していたようです。また、別の個所には、野戦に優れた軍人だからといって優れた首相になれるとは限らない、というようなことも書かれていました。現代にも通じる考え方と思います。

あと、心に残ったのはこの一文。軸がぐらつくとダメだよ、と言っています。
およそ人生において最も肝要なことは、物事を把握しまた判断する場合の立場を正確に定めて、固くこの立場を守るに如くはない。我々は一個の立場からのみ、夥しい現象を統一的に把握することができるし、また立場が常に一定不変であるからこそ、矛盾に陥らずに済む P.320

 

もしクラウゼヴィッツが長生きしたら、もう少し考察が加わって、推敲されて、格段に完成度が上がっていたんだろうと思います。心残りだったのではないでしょうか。

f:id:Kawataka:20191022171939j:plain