Kawataka’s diary

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AI vs. 教科書が読めない子どもたち

表題は、「20万部突破」と帯が付いた科学本です。半年くらい前に売りだされた本で、昨日読んでみました。が、いまいちな内容でした。

前半は東大合格を想定したロボット開発の話をメインにAIの話、後半は中高生の学力診断テストの話でした。AIの技術論は非常に勉強になりましたが、大筋は、ちょっとどうかな、と思う内容でした。


東ロボの話は、後だしじゃんけんのにおいがします。このロボットの研究がスタートした時の新聞記事を読んだ記憶がありますが、「東大合格を目指して開発する」と言っていたはずです。それを今になって「近い将来東大に合格することは不可能と、開発スタートの頃からわかっていた」などと言うのはいかがなものか。
世間が誤解した云々と言っていますが、科学者なら誤解を解くべく努力すべきでしょう。その努力が少しも感じられない。
だいたい「東大」という固有名詞を持ってくるあたり、最初からマスコミ受けを狙った感じがしてなりません。都合のいいように誤解させておいて予算をとれたのなら作戦成功でしょうが。。。

後半の読解力の話は、無茶苦茶です。
中学生の3割くらいが教科書を読解する力がない、これは由々しき問題だ、という論調です。しかし、著者は読解力と相関のある因子がなんであるかわからなかった、と述べています。すなわち、アンケートを取って、読書習慣やスマートフォンの使用量など思いつく因子を調査したが、関係性は認められなかったと。その解釈として「中学生の3割くらいは読解力が無いから、そもそもアンケートの文章が理解できなかったんじゃないか」と推論して、それ以上の解析をしていません。この結論、無茶苦茶です。本気で言っているとしたらまずいです。だいたい、それじゃあ何のために読解力テストしたんでしょう?目的は何だったのか?読解力の現実を把握するだけ?本当の目的は、読解力を向上するにはどうすればよいかを解析し、それをもとに中高生の読解力を向上することにあるのでは?
向上の方法を示さない一方で、関東の某市の取り組みを引き合いにして、この読解力テストを受ければ学力が向上するかも、とほのめかし、さあ皆さんテストを受けてください、と宣伝するのはなんだかな、という感じです。また資金確保?、と思わずにはいられません。(最近は大学の予算も獲得が難しいと聞いています。それであればこのようなやり方も仕方がないのかもしれません)

?が多数の本でした。前半のAIに関する技術論は非常に勉強になったのですが、結論が残念です。

 

著者は「年に5冊程度しか本を読まない」と言っているが、本当に?研究者としてそれで良い?読書量と読解力は関連ない、ということを示唆したいつもりなんでしょうが。その直後にデカルト方法序説を20回も読み返したとかちょっと自慢気に書いているのが痛々しいです。あまり自慢できるようなことではないと思います。方法序説岩波文庫の中でも結構読みやすい部類で、その気になれば毎週末でも読み返せると思います。現役の研究者はそんなに時間が無いのでしょうか。愕然とします。